このシリーズでは、定番バックアップソフトウェアNetVault Backupの、
さまざまな機能や最新情報を紹介していきます。


前回(第4回~第7回)までで、NetVault Backupの基本的なバックアップジョブ作成方法は、ご理解いただけたかと思いますが、実際には適切なバックアップ計画に基づいた運用が求められます。

今回は、NetVault Backup から少し離れて、基本的なバックアップに関する概念についておさらいしてみましょう。

>  バックアップ方法

バックアップと一口に言っても、いくつかの方法があります。まずは、バックアップ方法について再確認しておきます。

■フルバックアップ

指定されたディレクトリ、ファイルを全て一括してバックアップします。あらゆるバックアップの基本です。フルバックアップがないと、下記のその他すべてのバックアップ方法が成り立ちません。

長所 常に1回分のバックアップ・データからリストアが可能です。方式が単純であるため、メディアの管理に対する注意があまり必要ありません。
短所 すべてのデータを取得するため時間がかかります。


■増分バックアップ

指定されたディレクトリ、ファイルの内、前回のバックアップ (フルバックアップだけではなく、差分/増分バックアップも含む) から追加/変更されたファイルおよびディレクトリをバックアップします。

長所 日々の変更分だけバックアップを行うため、最もバックアップ量が少ない方法です。
短所 リストア時にスキャンすべきテープ本数が多くなり、リストア時に時間がかかります。

 
■差分バックアップ

指定されたディレクトリ、ファイルの内、前回のフルバックアップ以降に、追加および更新されたファイルおよびディレクトリをバックアップします。

長所 フルバックアップを基準にして追加変更ファイルを取得するので、フルバックアップよりバックアップ量が少なくなります。フルリストアを行う際に、最大でも2回分のバックアップ・データをリストアするだけで最新のデータに戻すことができるので、増分バックアップより時間の短縮になります。
短所 常にフルバックアップを基準にして追加変更ファイルを取得するため、増分バックアップよりバックアップ量が増大します。

 

 ■コンソリデート・バックアップ(差分/増分バックアップの統合)

上記3種類のバックアップとは異なり、直接対象となるデータを読み出して取得するのではなく、今までに取得されたフルバックアップや差分/増分バックアップ等のバックアップ・メディア内に格納されたデータを統合し、最新のフルバックアップを作成することができます。

  

長所 差分/増分バックアップの短所である、リストア時に複数巻のテープを使用することによる時間の問題について解決することができます。特に、バックアップ・クライアントからのバックアップに活用することで、フルバックアップを実行せずトラフィックを最小化することが可能です。
短所 すべてのバックアップ統合処理を、バックアップとは異なるジョブとしてバックアップ・サーバ内で行う必要があり、ジョブ実行の考慮が必要です。

※NetVault Backupでは、このバックアップ統合機能をファイルシステムのバックアップについて、"Consolidate Incremental Backups"プラグインとして標準提供しています。

 これらのバックアップ方式を、
バックアップデータ量(日々の更新量)やバックアップウインドウ(バックアップに許される時間)を考慮しながら、お客様のデータ保存ポリシーに基づいて選択する必要があります。

> メディア・ローテーション

 使用するバックアップ・デバイスやバックアップ・ポリシーにより、正しいメディア・ローテーションを選択する必要があります。このメディア・ローテーション設計をおろそかにすると、バックアップの際に適切にジョブの実行ができないだけでなく、いざシステム障害が発生してリストアを行おうとした際に、正しく復旧できないということになりかねません。

メディア・ローテーションは、上記の各種バックアップ方式と組み合わせて使用することになります。

■ Son方式

一般的に、シングル・ドライブ使用時にもっともよく使用する方法と考えられています。月曜から金曜は差分バックアップを行い、土曜または日曜にフルバックアップを行います。次週のフルバックアップの際には、テープへ上書きを行います。


※ 同じ番号のテープは、物理的に同一のテープ・メディアを表します

シングル・ドライブで運用する場合、最低2本以上のテープを使い、少なくとも週末毎のフルバックアップの際には、メディアを交換しながら運用してください。

■ Father-Son方式

週末はフルバックアップを行い、平日は差分バックアップを行います。平日の差分バックアップの際に、曜日毎にメディアを決め、月次の中では週末のフルバックアップの際に毎回異なるメディアを使用します。主に比較的巻数が少ない6~10巻程度の小規模なオートローダやライブラリにて使用される方法です。最低1世代のデータが保護されます。また、週末に使用するテープの巻数を増やすことでより多くの世代を保存することが可能です。


※ 同じ番号のテープは、物理的に同一のテープ・メディアを表します

この例では、曜日毎に差分バックアップに使用するテープが規定されていますが、NetVault Backupのグループ・ラベルの機能を使用することにより、より効率的にメディアを使用することができます。

■ Grandfather-Father-Son (GFS) 方式

バックアップに関するメディア・ローテーションの解説を読むと、一番良くでてくる方式がこのGFS方式です。メディア・ローテーションにより、複数世代の保持はもちろんのこと、月次でのフルバックアップを長期保存用として別途設定する事により、テープコストを抑えながら長期的なバックアップ計画を行うことができます。


※ 同じ番号のテープは、物理的に同一のテープ・メディアを表します

 

■ ハノイの塔方式

少ないメディア・コストで、フルバックアップ・データをできるだけ長期間残すための方法です。この名称は「ハノイの塔」と呼ばれる数学的な議題等にもなる玩具に由来しています。ジョブやメディアの管理が複雑になるため、あまり使用されていません。

 

>  バックアップ計画の例

具体的にバックアップ計画を行うためにバックアップの要件を洗い出します。

【ファイルサーバ "XXXX-1" のバックアップ計画例】

    1. バックアップ対象は"D:ドライブ"以下とする
    2. バックアップ対象サイズは、最大で約10TB、平日の更新量約100GB
    3. 平日バックアップに許される時間は午後11時から翌朝午前7時まで(=バックアップウインドウ)
    4. バックアップ先デバイスの実効性能は約100MB/s
    5. バックアップ先デバイス性能とバックアップウインドウから、バックアップ方法を選択
    6. 毎週土曜日の午後11時にフルバックアップ、平日(月曜~金曜)の午後11時に増分バックアップを行う    
    7. 3世代分のフルバックアップを常に保持する    
    8. 増分バックアップ用メディアを5本用意し、フルバックアップとは異なるメディアにする。増分バックアップ用メディアは必ずしも1日1本でなくてよいが、フルバックアップ用メディアは独立したメディアにすること

運用環境によって様々ですが、基本的な考え方さえ分かれば、あとはその応用です。バックアップ対象マシンそれぞれについて、バックアップ方法やメディアローテーションをあてはめてバックアップを計画していきます

番号 サーバ名 OS 用途 バックアップ対象 最大サイズ 日々の更新サイズ バックアップウインドウ バックアップ方法 世代数 メディアローテーション 備考
1 XXXX-1 Windows2008R2 ファイルサーバ Dドライブ 10TB 100GB 8時間 フル+増分 3 Father-Son  
2 XXXX-2 Windows2008R2

SQL Server

SQL Server ・・ ・・          
3 XXXX-3 RHEL6.3 Oracle Oracle              

 
※なお、メディア・ローテーションについては、基本的には物理テープ装置(および仮想テープ・ライブラリ)に関する考え方になります。


最近はバックアップデバイスとしては、テープ装置に代わって重複排除アプライアンスなどディスクへのバックアップが主流になりつつあります。
NetVault Backupが利用できるディスクバックアップのNetVault SmartDiskやEMC DD Boost、QUEST DR4100 RDAでは、メディアではなく、ストレージ・プールという考え方のため、メディア・ローテーションについて考慮する必要はなくなりました。


 

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