このシリーズでは、定番バックアップソフトウェアNetVault Backupのさまざまな機能や最新情報を紹介していきます。

> テープ・メディアをふりかえる

テープといえば、ひと昔前は、普段の生活で、音楽を記録するのにカセットテープ、ビデオを記録するのにビデオカセットテープを使っていましたが、今ではカセットテープやビデオテープを見かけることはほとんど無くなりました。音楽の記録・再生は、カセットテープからCD・MDを経てハードディスク・フラッシュメモリを使用したプレーヤーが主流になり、動画の記録・再生は、ビデオカセットからDVD/BD/ハードディスク・レコーダに主流が移っています。

サーバ・バックアップでは、ハードディスクへのバックアップも行われるようになりましたが、磁気テープはまだまだ現役です

磁気テープで運用する場合、世代管理やテープローテーションを設計するにあたって、テープの特徴・長所・短所を理解しておくことは重要です。

昔のカセットテープ、ビデオテープで不便だったこと、今のハードディスクレコーダで便利になったことを思い出してみてください。

  長所 短所
磁気テープ ・安価/大容量
・可搬性・外部保管
・長期保存に向く

・シーケンシャルアクセスが高速
・シーケンシャルアクセスのため
 先送り・巻き戻し操作が発生

・メディアが増えてくると管理が大変
・構造上、故障率がディスクに比べて高い
ハードディスク

・安価/大容量
・ランダムアクセスで頭出しが高速

・同時アクセスが可能
・管理が容易
・RAIDにより耐障害性向上

・電源が必要
・容量管理が必要
・長期保存に向かない

テープは、シーケンシャル書き込みなら、実はハードディスクよりも高速だったりします。
(たとえばLTO-6規格では、最大160MB/秒)
また、メディアをとりだして持ち運びができるので、耐火金庫にいれて長期保管したり、遠隔地に運んで保管することができます。
このような長所のため、サーバ・バックアップではテープ運用はまだまだ現役です。

しかしシーケンシャルアクセスで書き込みをすることはデメリットもあり、メディアの運用に制約がでてきます。

・メディアの先頭から順番に書いていきます。途中から書きだすことはできません。

・先頭から上書きすると、以前に書き込んだバックアップデータは読み込めなくなります。

この例では、4回目を先頭から上書きしたので、以前の1~3回目のバックアップが読み込めなくなります。

・メディアの中に複数のバックアップデータを書き込んでいる場合、すべてのバックアップデータの保存期間が期限切れになるまで、消去や再利用しないように注意する必要があります

この例では、次に6回目のバックアップを次に1巻目の最初に書き込むと、1~3回目のバックアップが読み込めなくなります。
逆に、3回目のバックアップの保存期間が有効でリタイアしていない場合
バックアップソフト側では3回目のバックアップが上書きされないように保護するので、1巻目2巻目とも書き込めず、6回目のバックアップはメディア不足(メディア交換待ち)になります

このような磁気テープの基本的なしくみを理解しておくと、NetVault Backupでテープ・メディアの取り扱いやローテーションの設定も理解しやすくなります。

> 新しいメディアはブランク状態

まずは、デバイス管理での、メディアの取り扱いについて紹介します。

以下の例は、8巻のメディアがある仮想テープ・ライブラリです。物理テープライブラリでも同じ考え方になります
8巻のメディアが入る装置に、すべて新規のメディアを挿入すると、ブランク状態として認識されます。

この状態で、例えば何らかのデータを、何も細かい設定をせずにメディア等を指定しないで実行すると、自動的に以下のようなフォーマットで、テープのラベル名が自動作成されます。

"NetVault Serverのマシン名"+"日"+"月(英語表記)"+"時分"+"-連番(同じ時分になった場合に増加)"

問題なくバックアップ、リストアもできますし、手軽に使用する分には、これでもよいでしょう。
しかし、自動で付加されたラベルでは運用で以下のように注意が必要になります。

・テープ・メディアとラベル名の対応がわかりにくい。テープ・メディアを外部保管する際には、特に管理が煩雑になる。
・メディアをいくつかのグループにわけて、ジョブごとにグループを切り替えて使用することができない。
・CLI等からラベル名を指定する場合に、自動作成のラベル名は表記が長いので、オペレーションが煩雑になる。

このため、実運用では、前回のようにラベル設定を行って、メディアをいくつかのグループにわけて、ジョブごとに指定できるように、運用環境を整えましょう。

> メディアに設定した内容を消去するには

一度設定したラベル名を、もう一度ブランク状態にしたい場合には、ブランクを実行します。ラベル名が設定されたメディアの右クリックメニューから"ブランク"を実行します。

確認のメッセージが表示されるので、"OK"を選択すると、ブランク処理が行われます。

なお、メディアの中にバックアップのデータが入っている場合にブランクを実行すると、データが失われます。 

次に、メディアローテーション運用に有効なオプション群について紹介します。
このオプション群は、ジョブのターゲット・タブの一般オプションにあります。

> 必ずメディアの先頭に書き込む

この設定をうまく利用すると、1つのジョブの定義で、メディアのローテーションを効率的に行うことが可能になります。

以下の例は、4本のブランク・メディアがある状態です。


"必ずメディアの先頭に書き込む"の設定を行います。
あわせて、"メディアを再利用"を"指定なし"にしておきます。この設定を行わないと、このジョブ自体が再利用可能メディアに書き込みを行いません。
また、世代管理としてメディアの本数より1つ少ない数を指定します。

1回目のジョブを実行します。どのメディアも先頭から書き込める状態ですので、4本のうち1本のメディアにデータが書き込まれます。

2回目のジョブを実行します。すでにデータが書き込まれたメディアには有効なバックアップ・データが存在して、先頭から書き込むことはできませんので、そのメディア以外のブランクメディアにバックアップ・データが書き込まれます。

同じように3回目、4回目のジョブを実行します。これで、全てのメディアにバックアップ・データが書き込まれることになります。

この時、世代管理を"3"に設定しておいたので、最初にデータが書き込まれたメディアは再利用可能となります。

よって、もう一度同じジョブが実行されると、再利用可能になっているメディアに書き込まれます。

同時に2番目に書き込んだメディアが再利用可能になります。

このようにすると、新たなバックアップ・データが書き込まれる度に、別のメディアが再利用可能となり、メディア・ローテーションがうまくまわります。(バックアップ・データが1本のメディアに収まることが前提です。)

注意:"必ずメディアの先頭に書き込む"オプションの設定は、"先頭から書き込めるメディアを探して書き込む"という意味になります。"データが存在するメディアに先頭から上書きをしてデータを書き込む"ということではありません。

 

> バックアップ後の追加書き込みを禁止

"バックアップ後の追加書き込みを禁止"オプションの設定を行うと、バックアップ・データを書き込んだ後、バックアップ・データを保護するため、そのメディアを書き込み禁止状態にします。
たとえば、Father-Son方式でフルバックアップ用のメディアに、増分バックアップや他のバックアップセットを追記したくない、といった場合に有効です

"tape1"というメディアに対して、"バックアップ後の追加書き込み禁止"を有効にしてバックアップを行います。

デバイス管理画面で、"tape1"メディアのプロパティを確認すると、"読み込み専用"にチェックが入っていることが確認できます。この設定により、追記ができないようになります。

この設定が世代管理にどう影響を受けるのかを試します。本設定を行い、世代管理として"1"フルバックアップとします。今回は書き込むメディアの指定は行いません。

ジョブを実行すると、メディア管理画面からこのバックアップ・データの残り世代数が"1"であることが確認できます。また、メディアのプロパティを確認すると"読み込み専用"になっていることが確認できます。

同じジョブを再度実行します。一つ前の手順でバックアップを取得したメディアは、"読み込み専用"となっているため使用されず、別のメディアにバックアップが行われます。また、同じフル・バックアップが実行されたため、一つ前の手順で取得したバックアップ・データはリタイヤされます。と同時に、そのメディアに唯一存在していたデータがなくなったため、メディア自体が再利用可能となります。そのメディアのプロパティを確認すると、再利用可能となったことを受けて"読み込み専用"の設定が外れます。

 

これらのオプションを有効にすることで、
フルバックアップ用メディアは、常にメディアの先頭から書き込み、他のバックアップを追記しないようにするメディアローテーション設定が可能になります。

 
※なお、今回扱った内容は、基本的には物理テープ装置(および仮想テープ・ライブラリ)のメディアの使い方になります。
NetVault SmartDiskやEMC DD Boost、QUEST DR4100 RDAなどのディスクバックアップでは、メディアではなく、ストレージ・プールという考え方のため、メディア・ローテーションについて考慮する必要はなくなりました。

 

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