>> はじめに |
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前回の講座では、共有ストレージのデータについて、ということで、OCRファイルや投票ディスクなどの、Oracle RACの構成を支えるデータのバックアップについてご紹介しました。今回は本題であるデータ・ファイルのバックアップについてです。
>> 共有ストレージのデータについて(後編) |
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Oracle RACを構成する際、各種のデータをどのようなボリュームに格納するかについては、様々な方法があります。
- ASM (自動ストレージ管理)
- Rawデバイス
- OCFS (Oracle社提供のクラスタ・ファイル・システム)
- 各社ベンダー提供のクラスタ・ファイル・システム
ここでは、もっとも一般的なStandard EditionによりOracle RACを構成する場合の必須要件となるASMを使用した場合を例にとって説明していきます。
■ASMとは?
技術的な詳細は、Oracle社のドキュメントやWebサイトを参照していただきたいのですが、簡単に言えばOracle社が提供するOracleデータベース・ファイル専用のファイル・システムおよびボリューム・マネージャです。
すべての機能がOracleデータベースからの使用に便利なように設計されており、パフォーマンスや可用性の向上が容易にできるようになっています。その分、通常のOSからはブラックボックスになっており、各データに対してのアクセスがファイルに対してと同じようにはできないようになっています。このASMには、通常以下のようなデータが格納されます。
- 制御ファイル - Oracleデータベースを制御するための情報を持ったファイルであり、サイズは数MBと小さいですが、消失するとデータベースが起動できなくなる、重要なファイルです。データベースの名前や、データ・ファイルに関する情報、ファイルの整合性を確認するための情報などが書き込まれています。
- SPFILE - 各種の設定内容が記述されており、Oracle RAC環境では初期化パラメータファイルではなく、このサーバパラメータファイルをASM上において共有して使用することが多いようです。
- オンラインREDO - オンラインREDOログファイル、挿入/変更/削除といったすべての変更情報が書き込まれます。このオンラインREDOログは、ノード間で共有されることはなく、各ノードで独立して使用するよう、必要な数が作成されます。
オンラインREDOはオンライン・バックアップができないため、ストレージ側もしくはASMの機能を使用して冗長化した場所に作成することが推奨されます。 - アーカイブログ - オンライン・バックアップを行うには、ログスイッチにより、オンラインREDOが上書きされる前に、アーカイブログとして書き出すようアーカイブログモードの設定を行う必要があります。
そのようにして、アーカイブされたログは、万が一の障害時のリカバリに用いられるため、データ・ファイル同様に重要なデータとなります。 - データベース・ファイル - データ・ファイルには、各種のテーブルなどのオブジェクトが格納されます。用途によって、システム表領域用、ユーザ表領域用、一時表領域用、UNDO表領域用などがあります。
一時表領域については、再作成が可能なためバックアップする必要はありませんが、それ以外はUNDO表領域も含めて、すべて保護すべきデータになります。
■ASM上のデータはどのようにバックアップするのか?
ASMはOSからは、ブラックボックスだというお話をしましたが、そのため、シングル・インスタンスのユーザ管理のバックアップのように、データ・ファイルをバックアップモードにして、OSのコマンドでバックアップするようなことはできません。基本的には、Oracle RMANを使用して論理的なバックアップを行う必要があります。そこで、ここからはNetVault BackupのOracle APMを使用した方法をご紹介します。
>> Oracle APMを使用したOracle RAC環境のバックアップ |
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Oracle APMを使用したOracle RAC環境のバックアップ方法は、こちらにFAQが掲載されています。また、Oracle APMの使用方法を説明したユーザーズ・ガイドにも詳細があります。これらの情報を元にした実際の設定例を見てみましょう。
なお、ここからの内容は、基本的なNetVault Backupの使い方、およびOracle APMの使い方の詳細はあまり含まれていません。既に、「一からはじめるNetVault (Linux編) 」や「Oracleバックアップ虎の巻 (Linux編およびWindows編)等を理解しているというのが前提になりますので、わからない方はあらかじめこれらの以前の講座をご一読をお願いします。
■ご紹介する構成例の環境について
基本的には前述のFAQの条件に当てはまる環境であれば、動作に問題はありません。今回は次のようなテスト環境を例に、話を進めていきます。OSやOracleのバージョンが異なっても、基本的な考え方は一緒です。
NetVault Server
- OS: RedHat Enterprise Linux 5.2 (x86-32)
- DB: Oracle Database 11.1.0.6.0 (リカバリ・カタログ用)
- NVB: NetVault Backup 8.2.1, Oracle APM v5.5
- TAPE: 無いため仮想テープライブラリ(VTL)を使用
- ホスト名: aokirhel5bkNetVault Client (Oracle RACノード1)
- OS: RedHat Enterprise Linux 5.2 (x86-32)
- DB: Oracle Database 11.1.0.6.0 (2ノードRAC構成)
- NVB: NetVault Backup 8.2.1, Oracle APM v5.5
- ホスト名: aokirhel5rac1NetVault Client (Oracle RACノード2)
- OS: RedHat Enterprise Linux 5.2 (x86-32)
- DB: Oracle Database 11.1.0.6.0 (2ノードRAC構成)
- NVB: NetVault Backup 8.2.1, Oracle APM v5.5
- ホスト名: aokirhel5rac2
■事前に確認すべき前提条件
マニュアルにも詳細が記載されていますが、もっとも重要な事項について特に細かく確認します。
◇オンライン・バックアップを行うため、アーカイブログモードの設定を実施
こちらの例は、WindowsですがLinuxでも同様の設定になります。
◇制御ファイルの自動バックアップを有効に
RAC自体に必要な設定として、制御ファイルの自動バックアップが有効になっている必要があります。デフォルトでは有効になっていませんので、こちら参照して設定を変更してください。
◇NetVault ServerはOracle RAC環境とは異なるマシンで
上記の構成例で既にNetVault Serverは別のマシンになっていますが、RACノード自体にNetVault Serverを導入することは推奨されません。
◇RMANリポジトリは、リカバリ・カタログで
Oracle RMANを使用してバックアップをするのに、必ずしもリカバリ・カタログを使用する必要はありません。しかし、RAC構成の場合で、特にSPFILEや制御ファイルのバックアップ/リストアを考えると、RAC構成外にリカバリ・カタログを構築することを強くお勧めします。また、FAQに記載があるように、異なるノードからのリストアも行うのであれば、リカバリ・カタログは必須となります。
もし、RMANリポジトリやリカバリカタログって何?という方は是非こちらを参照してください。リカバリ・カタログ構築後は、バックアップ・サーバ側のリスナーの設定や、RACノード側のローカル・ネーミング・パラメータ(tnsnames.ora)の変更をお忘れなく。
◇その他
一番重要な事項だけ説明させていただきました。これ以外にも、Oracle APMやRAC環境に関する要件がマニュアルには記載されていますので、確認しておいてください。
■NetVault Serverを用意する
バックアップ・サーバであるNetVault Serverを構築するにあたっては、特に大きな注意点はありません。単なるバックアップ・サーバとなる場合には、NetVault Serverとしての導入方法を参照して設定を行います。バックアップ・サーバは、システム構成上、リカバリ・カタログを作成する場所になることも多いです。その場合には、Oracle Databaseをインストールした上で、リカバリ・カタログの作成等を行っておきます。
今回はバックアップ・デバイスとして、仮想テープ・ライブラリを使っていますが、バックアップ・デバイスの制約は特にありません。NetVault Backupで対応しているすべてのデバイスをご利用いただけます。
■NetVault Clientのインストールと、クライアント追加とAPM導入
NetVault Clientのインストールは、NetVault Serverのときと同様に行います。
次に、NetVault ServerからNetVault Clientをクライアント追加します。
クライアントとして追加することで、Oracle APMの導入も、NetVault Serverから実施することが可能になります。
■Oracle APMの設定
Oracle APM自体の設定は、スタンドアロンのOracle環境に設定する場合となんら変わりありません。Oracle APMソフトウェアの追加により、各ノードにOracle APMのアイコンが表示されるようになるので、ダブルクリックして各種の設定情報を入力します。
Oracleインスタンス詳細を入力したら、RMANの詳細では制御ファイルの自動バックアップを使用するように設定し、更にRMANリポジトリとしてリカバリ・カタログを使用するよう指定します。この例では、バックアップ・サーバ上に構築したリカバリ・カタログを指定しています。
Oracle APMのもう1つの設定は、Oracle APMのアイコンを右クリックして設定から、特に自動バックアップ用のターゲットセットを入力することです。ターゲットセット以外にも、必要な項目を入力していきます。
自動バックアップ用のターゲットセットは、あらかじめターゲットセットを作成しておく必要がありますので、注意が必要です。
■複数のノードが存在する場合の設定について
詳細はこちらのFAQに記載されています。その中でも、下記の異なるノードからリストアを行う場合には、リストアに使用するノードに対するOracle APMの設定が若干異なります。
[B-3] 複数のRACノードにNetVaultをインストールし、1つもしくは複数のノードからバックアップを実行。ノード障害時は、別のノードからリストアを行う場合:
上記の詳細については、別途取り扱い予定です。
■Oracle APMによるバックアップの実行
バックアップ・ジョブの作成方法等については、シングル・インスタンスの場合と大きな違いはありません。
バックアップ・ジョブ実行後に、リストア画面で確認すると、アーカイブログが複数ノード分取得されていることが確認できます。
>> 次回は |
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今回は、バックアップ・ジョブの作成まで確認できました。次回は障害復旧について取り扱います。