>> はじめに |
いよいよインストールの実践編になります。ここで1点注意しなければならないことがあります。本来SharePlexは、Oracleの稼働環境の中でも、特に高度にミッション・クリティカルなシステムでも使用が可能なように、豊富な機能を持っています。その分、本番の稼働環境にインストールするには様々な確認項目があるのですが、それらをすべてご説明していくと、マニュアルそのものになってしまいます。
そこで、本講座ではそれらの注意点の中でも、最低限SharePlexの動作に必要となる、つまり設定しないと動作しない項目に絞って説明していきます。つまり、これからご紹介する内容はすべて、テスト環境で動作させるための内容になりますので、あらかじめご了承ください。
>> テスト環境を用意しよう |
本講座ではまず、Linux上で稼働するOracle 11gR2の環境が2台あるという想定で、ご案内していきます。実際に使用しているのは、Red Hat Enterprise Linux 5.7(x86-64)の上に、Oracle Database 11gR2 11.2.0.2(64bit)をインストールしています。
SharePlexは大きく分けてLinuxおよびUNIX用とWindows用の2つのプラットフォームにわかれています。本例ではすべてLinuxを使用していますが、基本的な考え方はUNIX版も同じですので、参考になると思います。Windows版も概念としては一緒なのですが、Windows版ならではの仕組みがありますので、こちらは別途ご紹介したいと思います。
なお、最新版のVer7.6.x以降では、SharePlexは完全に64bit版のみになりました。もし、32bit環境での導入やテストを行いたい場合には、Ver7.5.xにて対応していますので、別途お問い合わせください。
>> インストールに必要なバイナリと、マニュアル、そして評価用ライセンスについて |
インストール時に必要となる情報の入手方法については、すべて前回の講座でご紹介しましたので、こちらをご覧ください。
今回の例では、2011年12月15日に提供を開始した、SharePlexのバージョンが7.6.2で、"Red Hat Linux, SuSE, Oracle Enterprise Linux 4, 5, and Oracle Linux 5 Exadata2 (Oracle 11g) "と対応が明記されている、LinuxのOracle 11g用のモジュールを使用しました。ファイル名は以下の通りです。
Quest_Red-Hat-Linux-SuSE-Oracle-Enterprise-Linux-4-5-and-Oracle-Linux-5-Exadata2-Oracle_762.tar
なお、前回もお伝えしましたが、評価用ライセンスは別途申請が必要ですので、あらかじめ準備をお願いします。
>> インストール要件の確認 |
実際にインストールを行う前に、以下の項目について確認を行います。
- OSのユーザとして、rootおよびoracleユーザで、インストール対象のシステムにアクセスができること - 本講座では、rootユーザによるインストールの例をご紹介します。
- レプリケーション用として、Sourceサーバ(転送元)とTargetサーバ(転送先)の間で双方向で通信できるポート(TCP/UDP)があること - SharePlexはTCP/IPを使用して2台のマシン間でレプリケーションを行いますが、そのためのポートが利用できる必要があります。ファイアウォール使用環境でも動作しますが、ポートの設定が必要ですので、テスト環境では使用を割愛することをお勧めします。
- カーネルパラメータの設定 - 実際には、細かく設定があるのですが、Oracleのインストール時に基本的な設定はされていますので、ここでは省略させていただきます。
- 必要なライブラリについて- Linuxの場合、次の32bitライブラリが必要になります。
- libncurses.so
- libgcc_s.so.1
基本的にはOSインストール時に含まれているはずですが、インストール時にエラー等になる場合には確認するようにしてください。
※他にも多くの要件がありますので、必ず本番運用に備えてマニュアル等で確認しておいてください。
>> インストールファイルの解凍 |
SharePlexのソフトウェアは、導入するサーバのOSとOracleのバージョンによって、厳密にファイルが異なりますので、ダウンロードの際にはよく確認する必要があります。
また、ダウンロードした場合には、ファイルは圧縮されていますのでtarコマンドを使用して事前に解凍しておきます。
# tar xvf ./Quest_Red-Hat-Linux-SuSE-Oracle-Enterprise-Linux-4-5-and-Oracle-Linux-5-Exadata2-Oracle_762.tar SharePlex-7.6.2-b59-oracle110-rh-40-amd64-m64.tpm |
なお、圧縮時のファイル名は評価版ダウンロードのサイトと、製品のサポートサイトで入手できるもので異なる場合があります。上記は、評価版の例になります。もし解凍後のファイルに実行権限がない場合には、権限を変更しておきます。
# chmod 755 SharePlex-7.6.2-b59-oracle110-rh-40-amd64-m64.tpm |
>> インストール前に確認および決めておくこと |
これから実際にSharePlexのインストールを行っていきますが、インストール途中で各種の情報を入力する項目があります。事前に入力すべき内容について確認しておいてください。
■SharePlex専用のOSユーザを作成する
SharePlexのプロセスをどのOSユーザで動作させるかについては、大きく分けて2つの方法があります。1つは、Oracleユーザをそのまま使用する方法と、もう1つは、SharePlex専用のユーザを作成して設定する方法です。
確かにOracleユーザをそのまま使用した方が管理をする方としては、Oracle側の設定とSharePlex用の設定とでユーザを切り替えなくて良いので便利です。しかし問題等が発生した際の切り分け等については、専用ユーザを使用した方が良いと言えます。マニュアル上は両方の方法について説明していますが、本講座ではより確実性を求めるお客様のために、別ユーザでの管理方法についてご紹介しようと思います。OSのユーザとして、SharePlexユーザを作成しますので、以下の項目について検討をお願いします。
- SharePlex用の管理者ユーザ名: 本例では"splex"を使用しています (デフォルト)
- SharePlex用の管理者グループ名: 本例では"spadmin"を使用しています (デフォルト)
- SharePlex用の管理者ホームディレクトリ: 本例では"/home/splex"を使用しています
■Oracleの環境情報を確認しておく
インストール時にOracleの基本情報の確認があります。
- ORACLE_SID: 本例では、sourceが"src1"で"targetが"trg1"になっています
- ORACLE_HOME: 本例では、"/u01/app/oracle/product/11.2.0/dbhome_1"になっています
- ORACLEのdbaグループの権限があるOS上のグループ名: 本例では"oinstall"を使用しています
■SharePlexが利用するポートの確認
インストール過程において、SharePlexが使用するポートの確認があります。デフォルトは2100番になっていますが、変更することが可能です。本例では、デフォルトのまま2100番を使用しています。
>> いざインストール |
まず、Source側のホストでインストールを行ってみます。ここではホスト名"rhel5sposrc1"にrootでログインした状態で、あらかじめ解凍しておいたSharePlexのインストーラを実行すると、更に内部で解凍が行われて、プログラムの詳細が表示されます。ここで、かならずSharePlexのバージョンや、対応するOracleのバージョンおよびプラットホーム等を確認しておきます。
[root@rhel5sposrc1 ~]# ./SharePlex-7.6.2-b59-oracle110-rh-40-amd64-m64.tpm
Unpacking .................................................................. .......................................................................... .......................................................................... .......................................................................... .......................................................................... .......................................................................... .......................................................................... .......................................................................... .......................................................................... ..... SharePlex for Oracle installation program:
SharePlex Version: 7.6.2 Supported Oracle Version: 11gR1, 11gR2 Build platform: rh-40-amd64 Target platform: rh-40-amd64 |
次に事前に検討しておいたSharePlex用のユーザに関して入力します。[ ]内にデフォルトの設定値が表示されるので、そのままで良い場合には単にEnterを入力します。
Please enter the name of the user that will be the SharePlex Admin? [splex]
Create new SharePlex Admin user "splex"? [yes] Please enter the SharePlex Admin group? [spadmin] Create new SharePlex Admin group "spadmin"? [yes] Successfully created new SharePlex Admin group "spadmin" Please enter the home directory for the SharePlex admin user "splex"? /home/splex Successfully created new SharePlex Admin user "splex" NOTE: You will be asked next for a password for new SharePlex Admin user "splex".
User password must comply with your system password policy. Would you like to specify a password for new SharePlex Admin user "splex"? [yes]
Changing password for user splex. New UNIX password: Retype new UNIX password: passwd: all authentication tokens updated successfully. |
次に、実際にSharePlexをインストールするディレクトリを"product directory location"として設定し、"variable data directory location"には、ログやキューファイルなどインストール後に使用容量が増える可能性があるディレクトリを設定します。"variable data directory location"については、実際には容量のサイジングが必要ですが、ここではその検討を割愛しています。
Please enter the product directory location? /home/splex/splex Please enter the variable data directory location? /home/splex/vardir |
Oracle関連の設定では、SIDやORACLE_HOMEの設定、そしてdba権限のあるグループの指定等を行います。
Please wait while the installer obtains Oracle information ..
Please enter the ORACLE_SID that corresponds to this installation? [src1] Please enter the ORACLE_HOME directory that corresponds to this ORACLE_SID? [/u01/app/oracle/product/11.2.0/dbhome_1] NOTE: SharePlex needs to associate the SharePlex Admin user with a group
that has 'dba' privileges. Please enter the name of a 'dba' privileged group? [oinstall]
Successfully associated user "splex" with 'dba' privileged group "oinstall" |
SharePlexで使用するメインのポートを指定すると、最終確認画面が表示されるので、Enterを入力すると、処理が行われます。
Please enter the TCP/IP port number for SharePlex communications? [2100] Preparing to install SharePlex for Oracle v. 7.6.2:
User: splex Admin Group: spadmin Product Directory: /home/splex/splex Variable Data Directory: /home/splex/vardir ORACLE_SID: src1 ORACLE_HOME: /u01/app/oracle/product/11.2.0/dbhome_1 Proceed with installation? [yes]
Installing ................................................................ ......................................................................... ......................................................................... ~中略~
.........................................................................
.................... |
そして、一番最後にライセンスキーの入力画面になります。ライセンスキーと、名前を入力するとライセンスが有効になります。下記の例では、実際の評価キーを使用した内容ですので、有効期限が設定されます (なお、実際のキーの文字列は削除してあります)。バイナリ自体は、評価版も製品も同一ですので、製品評価後にキーをアップグレードすることで、そのまま本番環境でもご使用いただけます。
そして"installation successful"を確認して、インストール自体は終了です。
Do you have a valid SharePlex for Oracle v. 7.6.2 license? [yes] yes
Please enter the License key? xxxxxxxxxxxxxxxxxxx Please enter the customer name associated with this license key? Trial Version SharePlex for Oracle v. 7.6.2 license validation successful:
Customer Name: Trial Version License Key: xxxxxxxxxxxxxxxxxxx Product Name: SharePlex for Oracle - RAC License Key Type: "Trial Key" Expires: at Midnight of Apr 16, 2012 NOTE: You can upgrade this license key or add license keys for additional machines
by executing utility /home/splex/splex/install/splex_add_key. Installation log saved to: /home/splex/.shareplex/INSTALL-SharePlex-7.6.2-1203011531.log
SharePlex for Oracle v. 7.6.2 installation successful. |
>> まとめ |
今回は、実際の導入編ということでLinux環境でインストールを行うところまでご紹介しました。次回は後編ということで、インストール後にOracle向けに行わなければならない処理や、2台にインストールしたあとで、動作の確認を行う方法等について、取り上げる予定です。
動作確認自体は、仮想化環境上に構築した2台のマシン間でも行えますので、是非お試しください。