>> はじめに |
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前回までの講座で、バックアップジョブの基本的な作成方法は、ご理解いただけたかと思いますが、実際にはより複雑な運用を必要とする場合も多いと思います。そこで今回は、運用に即した設定方法について確認していきましょう。
まずは、実際にNetVault Backupでの設定を行う前に、バックアップの基本概念についておさらいしておきます。
>> バックアップのスケジュールについて考えてみる: バックアップ方法 |
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バックアップと一口に言っても、いくつかの方法があります。まずは、バックアップ方法について再確認しておきます。
■フルバックアップ
指定されたディレクトリ、ファイルを全て一括してバックアップします。あらゆるバックアップの基本です。フルバックアップがないと、下記のその他すべてのバックアップ方法が成り立ちません。
【長所】 常に1回分のバックアップ・データからリストアが可能です。方式が単純であるため、メディアの管理に対する注意があまり必要ありません。
【短所】 すべてのデータを取得するため時間がかかります。
NetVault Backup 8.5では、バックアップオプションの"バックアップ・タイプ"から"フル"を選択します。なお、デフォルトになっているため、通常はあえて指定は必要ありません。
■増分バックアップ
指定されたディレクトリ、ファイルの内、前回のバックアップ (フルバックアップだけではなく、差分/増分バックアップも含む) から追加/変更されたファイルおよびディレクトリをバックアップします。
【長所】 日々の変更分だけバックアップを行うため、最もバックアップ量が少ない方法です。
【短所】 リストア時にスキャンすべきテープ本数が多くなり、リストア時に時間がかかります。
※NetVault Backupではリストア時に複数巻のメディアを意識することなく、必要なメディアを使用または要求して自動的に動作させることが可能です。
■差分バックアップ
指定されたディレクトリ、ファイルの内、前回のフルバックアップ以降に、追加および更新されたファイルおよびディレクトリをバックアップします。
【長所】 フルバックアップを基準にして追加変更ファイルを取得するので、フルバックアップよりバックアップ量が少なくなります。フルリストアを行う際に、最大でも2回分のバックアップ・データをリストアするだけで最新のデータに戻すことができるので、増分バックアップより時間の短縮になります。
【短所】 常にフルバックアップを基準にして追加変更ファイルを取得するため、増分バックアップよりバックアップ量が増大します。
■コンソリデート・バックアップ (差分/増分バックアップの統合)
上記3種類のバックアップとは異なり、直接対象となるデータを読み出して取得するのではなく、今までに取得されたフルバックアップや差分/増分バックアップ等のバックアップ・メディア内に格納されたデータを統合し、最新のフルバックアップを作成することができます。
【長所】 差分/増分バックアップの短所である、リストア時に複数巻のテープを使用することによる時間の問題について解決することができます。特に、バックアップ・クライアントからのバックアップに活用することで、フルバックアップを実行せずトラフィックを最小化することが可能です。
【短所】 すべてのバックアップ統合処理を、バックアップとは異なるジョブとしてバックアップ・サーバ内で行う必要があり、ジョブ実行の考慮が必要です。
NetVault Backup 8.5では、"Consolidate Incremental Backups"プラグインとして、通常のファイルシステムのバックアップとは別で本機能を標準提供しています。
>> バックアップのスケジュールについて考えてみる: メディア・ローテーション |
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使用するバックアップ・デバイスやバックアップ・ポリシーにより、正しいメディア・ローテーションを選択する必要があります。このメディア・ローテーション設計をおろそかにすると、バックアップの際に適切にジョブの実行ができないだけでなく、いざシステム障害が発生してリストアを行おうとした際に、正しく復旧できないということになりかねません。
メディア・ローテーションは、各種バックアップ方式と組み合わせて使用することになります。
■ Son方式
一般的に、シングル・ドライブ使用時にもっともよく使用する方法と考えられています。月曜から金曜は差分バックアップを行い、土曜または日曜にフルバックアップを行います。次週のフルバックアップの際には、テープへ上書きを行います。一見バックアップは完璧にとれているように見えますが、フルバックアップ中のシステム障害に対しては、まったく無防備になってしまいます。詳しくはFAQ番号NVP00001をご覧いただくと、その危険性がよく分かります。
※ 同じ番号のテープは、物理的に同一のテープ・メディアを表しますシングル・ドライブで運用する場合、最低2本以上のテープを使い、少なくとも週末毎のフルバックアップの際には、メディアを交換しながら運用するよう心がけるべきでしょう。
■ Father-Son方式
週末はフルバックアップを行い、平日は差分バックアップを行います。平日の差分バックアップの際に、曜日毎にメディアを決め、月次の中では週末のフルバックアップの際に毎回異なるメディアを使用します。主に比較的巻数が少ない6~10巻程度の小規模なオートローダやライブラリにて使用される方法です。最低1世代のデータが保護されます。また、週末に使用するテープの巻数を増やすことでより多くの世代を保存することが可能です。
※ 同じ番号のテープは、物理的に同一のテープ・メディアを表します。この例では、曜日毎に差分バックアップに使用するテープが規定されていますが、NetVault Backupのグループ・ラベルの機能を使用することにより、より効率的にメディアを使用することができます。
■ Grandfather-Father-Son (GFS) 方式
バックアップに関するメディア・ローテーションの解説を読むと、一番良くでてくる方式がこのGFS方式です。メディア・ローテーションにより、複数世代の保持はもちろんのこと、月次でのフルバックアップを長期保存用として別途設定する事により、テープコストを抑えながら長期的なバックアップ計画を行うことができます。
■ ハノイの塔方式
少ないメディア・コストで、フルバックアップ・データをできるだけ長期間残すための方法です。この名称は「ハノイの塔」と呼ばれる数学的な議題等にもなる玩具に由来しています。ジョブやメディアの管理が複雑になるため、あまり使用されていません。
>> 最後に |
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以上、バックアップ方式とメディア・ローテーションの概念についてご説明しました。バックアップ方式については、すべてのバックアップ・デバイスに共通の設定ですが、メディア・ローテーションについては、物理テープ装置および仮想テープ・ライブラリに関する考え方です。SmartDiskに関しては、メディアではなく、ストレージ・プールという考え方のため、メディア・ローテーションに関する考え方は適用されませんのでご注意ください。
次回は、今回ご紹介した各種のメディア・ローテーションに対応した実際のジョブの作成方法についてご説明いたします。