>> はじめに |
|
前回は、バックアップの基本概念と各種のメディアローテーションの仕組みについて、確認してきました。考え方についてご理解いただいたところで、今回は実践編になります。
メディアローテーションの仕組みを、NetVault Backupを使用してジョブとして作成する方法について確認していきます。
なお、実際にジョブを作成するにあたっては、いくつかのポイントを押さえておく必要があります。
■デバイスとメディア
バックアップ・ジョブ作成時に、デバイスやメディアの指定を行いますが、その前提としてデバイス管理ウィンドウにて、正しい状態であることを確認しておきます。本例では、10巻あると想定したテープ・ライブラリ (実際には仮想テープ・ライブラリ) を使用しています。■バックアップの方法とスケジュール
各メディアローテーションの方法は、バックアップ方法とスケジュール設定が密接に関連しています。前回の講座にて概要をご説明しましたので、正しく理解しておくことをお勧めします。■バックアップ時間と各種設定について
通常、バックアップ時間は自由に設定することが可能ですが、本例では時間については23時にて固定して設定例を示しています。また、基本的に土曜日をフルバックアップとし、月~金曜日を増分バックアップとするような運用にしています。何週目という設定を行う場合には、下記の注意事項を事前にご確認ください。また、本講座でご紹介する方法が必ずしもそのまま運用に当てはまるということではなく、設定方法のご参考としてご利用ください。5週目がある時とない時の違いにより、運用に工夫が必要になる場合があります。
ソリューション番号 1774 -
スケジュール設定における Last Week 設定について例えば、増分バックアップの代わりに差分バックアップを採用したりすることも可能ですので、適宜読み換えて運用を検討するようにしてください。
詳細設定の世代管理については、各メディア・ローテーションに合わせた設定を行います。こちらは2世代に設定した例になります。
>> Son方式 |
|
■メディアの準備
シングル・テープ装置の場合には、メディアが1巻しか入りませんので、入れ替えて対応する必要があります。テープ・ライブラリを使用する場合には、複数巻のメディアを1つのグループとして見ることも可能です。例えば以下の例では、1-3スロット目をGroup Aのグループ・メディアとし、4-6をGroup Bのグループ・メディアとすることで、1巻に収まりきらないようなジョブのデータにも適用することが可能です。
■ジョブの作成
Son方式を1巻のメディアでローテーションする場合には、メディアへ上書きしている瞬間には、一時的にバックアップ・データが存在しない状態になってしまいます。そのため、シングル・ドライブであれば2巻、ライブラリ等でメディアをグループ化している場合には、2グループのメディア群を用意します。
●Son1のフルバックアップ
- バックアップ選択: バックアップ対象をセレクションセットとして保存
- オプション: フルを選択
- スケジュール: 第1、第3、第5の土曜日、23時を指定
※開始日は、調整しておく- ターゲット: Group Aのグループラベルを指定
- 詳細設定: 3世代保存
●Son1の増分バックアップ
- バックアップ選択: 作成したセレクション・セットをロード
- オプション: 増分を選択
- スケジュール: 第1、第3、第5の月曜日~金曜日、23時を指定
※開始日は、調整しておく- ターゲット: Group Aのグループラベルを指定
- 詳細設定: 世代無し
●Son2のフルバックアップ
- バックアップ選択: 作成したセレクション・セットをロード
- オプション: フルを選択
- スケジュール: 第2、第4の土曜日、23時を指定
※開始日は、第2から始まるように調整しておく- ターゲット: Group Bのグループラベルを指定
- 詳細設定: 3世代保存
●Son2の増分バックアップ
- バックアップ選択: バックアップ対象をセレクションセットとして保存
- オプション: 増分を選択
- スケジュール: 第2、第4の月曜日~金曜日、23時を指定
※開始日は、第2から始まるように調整しておく- ターゲット: Group Bのグループラベルを指定
- 詳細設定: 世代無し
■スケジュールされたジョブの確認
最終的に、2つのグループラベルのメディア群毎に、フルと増分のジョブが作成されるため、4つのスケジュールされたジョブをジョブウィンドウにて確認することができます。
>> Father Son方式 |
|
■メディアの準備
Fatherがフルバックアップとなり、2つのメディア・グループでローテーションを行います。Sonは増分バックアップとなり、1つのメディア・グループでローテーションを行います。
■ジョブの作成
増分バックアップのジョブは1つとなり、2つの異なるグループ・ラベルのメディアに対して、それぞれにバックアップ・ジョブを作成します。
●Father Son1のフルバックアップ
- バックアップ選択: バックアップ対象をセレクションセットとして保存
- オプション: フルを選択
- スケジュール: 第1、第3、第5の土曜日、23時を指定
※開始日は調整しておく
- ターゲット: Full Group Aのグループラベルを指定
- 詳細設定: 2世代保存
●Father Son2のフルバックアップ
- バックアップ選択: 作成したセレクション・セットをロード
- オプション: フルを選択
- スケジュール: 第2、第4の土曜日、23時を指定
※開始日は、第2から始まるように調整しておく
- ターゲット: Full Group Bのグループラベルを指定
- 詳細設定: 2世代保存
●Sonの増分バックアップ
- バックアップ選択: バックアップ対象をセレクションセットとして保存
- オプション: 増分を選択
- スケジュール: すべての月曜日~金曜日、23時を指定
※開始日は調整しておく
- ターゲット: Inc Groupのグループ・ラベルを指定
- 詳細設定: 世代無し
■スケジュールされたジョブの確認
合計3つのバックアップ・ジョブがスケジュールされた状態になります。
>> Grand Father Son方式 |
|
■メディアの準備
週毎に異なるMIDのメディアを4つ用意し、それとは別にGrand Father用として、独立したメディアを用意します。なお、下記の例では表示上Grand Fatherのメディアは1本だけですが、運用環境では複数用意するか、月に1度のGrand Father取得後に、メディアを入れ替えます。
■ジョブの作成
Grand Fatherは、完全に独立した第4土曜日用のバックアップ・ジョブとし、Fatherには、週ごとに異なるメディア (もしくは、グループ・ラベル) を使用します。そして、Son用には、やはりグループ・ラベルが設定されたメディアを使用します。
●Grand Father Full Week4のフルバックアップ
- バックアップ選択: バックアップ対象をセレクションセットとして保存
- オプション: フルを選択
- スケジュール: 第4土曜日、23時を指定
※開始日は調整しておく
- ターゲット: Grand Father 01のMID指定
- 詳細設定: 5年保存
●Father Full Week1-3のフルバックアップ
- バックアップ選択: 作成したセレクション・セットをロード
- オプション: フルを選択
- スケジュール: 月内における週を固定した各土曜日、23時を指定
※開始日は調整しておく
- ターゲット: Father 01~03の各MIDを指定
- 詳細設定: 3世代保存
●Son Incの増分バックアップ
- バックアップ選択:: 作成したセレクション・セットをロード
- オプション: 増分を選択
- スケジュール: すべての月曜日~金曜日、23時を指定
※開始日は調整しておく
- ターゲット: Inc Groupのグループ・ラベルを指定
- 詳細設定: 世代無し
■スケジュールされたジョブの確認
合計5つのバックアップ・ジョブがスケジュールされた状態になります。
>> ハノイの塔方式 |
|
■メディアの準備
メディアローテーションの説明にもありますように、バックアップの間隔が少しずつ大きくなっていくような、メディアのラベル設定を行います。ここでは、日にちの間隔に合わせた"2days"から"64days"までの6つのラベルを設定しています。複数巻に渡るバックアップ・データの場合には、グループ・ラベルにて同じように設定すると良いと思います。
■ジョブの作成
ハノイの塔方式では、少ないメディアコストで最大の効果が得られることを目的としています。そのため、バックアップ方法としては、1つのバックアップ・ジョブのみで完結してデータがリストアできることが求められるため、フルバックアップがメインで使用されます。
スケジュール間隔と、それに合わせたターゲット・メディアが異なるのみなので、簡単にご紹介します。
●2days、4days、8days、16days、32days、64daysのバックアップ
- バックアップ選択: バックアップ対象をセレクション・セットとして保存。、2つ目以降のジョブは保存されたセレクション・セットをロード
- オプション: フルを選択
- スケジュール: 23時を指定
※開始日を1日として、それぞれの間隔を設定する
- ターゲット: バックアップ間隔に合わせたMIDを指定
- 詳細設定: 世代管理については、別途検討してください。
NetVault Backupでは、メディアに対して完全なる上書きを行うことを許可していないため、ハノイの塔のメディア・ローテーションにおいては、ターゲット・タブにおけるメディアの再利用設定と、保存期間の調整を行う必要があります。
■スケジュールされたジョブの確認
バックアップ間隔に合わせた合計6つのジョブがスケジュールされていることが確認できます。バックアップの開始日についても、それぞれのポリシーに基づいて設定されていることがわかります。
※ハノイの塔方式の場合には、一度バックアップ・ジョブの間隔が不整合になると、調整が難しいため、注意が必要です。総合的に考えると、設定および管理の複雑さ等から、あまりお勧めできる方式ではありませんが、今回は参考までに設定方法をご覧いただきました。
>> 最後に |
|
以上、メディア・ローテーションの考え方に準じた設定方法についてご紹介しました。これらは、あくまで1つの考え方であり、実際には使用するユーザの目的に応じてカスタマイズして運用することをお勧めします。
次回は、運用に使うことがあるもう少し細かいオプション群について解説します。